相続(税)一般の特徴について
相続に係る問題は、当事者の一員である家族の中では漠然と意識されています。それでも、相続のタイミングを具体的(あるいは意識的に)に調整することは現実的には困難なものです。さらに、法人税や所得税のように自己の所得を基準に納税額が算出されるといった予測可能性の高いものではなく、相続という出来事をキッカケに被相続人(=亡くなられた方)所有の財産を基準に納税額が算出され、かつ相続する側(=相続人)が納税を行う仕組みにつき、相続人自らが完全にコントロール出来ない一種の不安定さが残る納税の仕組みともいえます。
また、一定の家族関係に基づき相続人が確定し、遺産分割手続きを経て各人への相続財産の帰属が固まることもあり、ビジネスのような経済合理性が優先する判断や手続きが馴染まないとの特徴もあります。そして、被相続人から相続人への財産の移転という権利譲渡の側面を有するゆえ、相続財産の内容如何によっては多額の納税資金負担が特定の相続人に求められたり、分割協議如何によっては流動性の低い相続財産の分割や強制換価を迫られることもあるなど、相続人の間で争いが生じやすい側面も有しています。
相続の流れと留意すべきポイント
相続税の申告は、原則として相続開始の日(=一般的には亡くなられた日)の翌日から10か月以内となっています。感覚的には、相当の時間的猶予があるように見えますが、下記に示すような各種作業や準備などを、相続が予定される関係者間で調整や合意を図りながらの日程ですから、思ったよりも短いものです。
実施する作業や準備 | 留意事項 | ||
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相続人の確定 相続財産の特定 相続財産の評価 相続割合の合意 相続税額の確定 相続税の納付 |
円満な遺産分割 納税資金確保 納税額圧縮の工夫 |
相続税割合(負担率)の現状と今後の動向
右図(出所:財務省HP)にある通り、相続税の負担割合(年間課税件数/年間死亡者数)は4%台と非常に低い値となっています。このため、実際に相続税の申告対象となる被相続人は4万人強とそれ程多くないのが現状です。
また、下図(地価公示指数の推移と相続税の改正 / 出所:財務省HP)に示す通り、基礎控除(=5千万円)及び法定相続人1人当たり控除(=1千万円)を考慮しますと、現行の相続税枠組みにおける相続税負担はそれ程大きくないとも言えます。
しかしながら、既に平成23年度の税制改革において、上記の基礎控除や法定相続人1人当たりの控除額を引き下げる動きがありました(ただし、実際には法案化されず見送られた経緯があります。)ので、今後は、従来申告対象とならなかった相続事案においても、納税申告義務が生じることが十分想定されます。
このような動向を踏まえますと、「多額の相続財産がないので、うちは相続税問題をあまり考えなくても大丈夫」などと楽観視することは出来なくなると思われます。
特に、流動性の低いご自宅などが相続財産の大半を占めるような場合においては、実際の納税資金捻出において大きな問題が生じる可能性がありますので、事前の対策や準備が重要になるといえるでしょう。
検討すべき課題(留意事項)について
相続問題は、納税の問題であると同時に重要な家族問題でもあります。このため、相続人特定において複雑な家族問題がある場合、相続財産の特定において特殊な事情を加味しなければならない場合、民法の規定する原則的な相続割合とことなる相続割合を合意しなければならない場合、など様々な事情を考慮しつつ手続きを進めなければなりません。
このため、第三者が客観的に、あるいは合理的に相続人間の利害を調整することを、相続税納付期間である10か月以内に実施することが難しい場合も間々あります。
それでも、争いごととなることを避けるには、出来る限り早く相続手続きを開始し、①正確な財産把握を行うこと、②正確な財産評価を行うことが、その後の遺産分割協議における当事者の納得や合意を得やすいといえるでしょう。
また、納税資金の確保も早めに行うことが重要です。相続税額は、通常の納税よりも高額になることが多いですが、分割納付ですとか期日延長納付などは原則として認められていません。特に、換価処分の難しい流動性の低い不動産が主たる相続財産である場合には、納税資金の捻出が難しい場合も多く、物納などの手続きを考慮する必要も出てくるでしょう。
相続人が遠隔地に所在する場合も多く、一連の手続きや協議になどには思いもよらぬ時間が掛かることがあります。従いまして、相続手続きを進めるにおいては、相続人の皆さんが思うよりも早く取り掛かることが重要といえます。
当事務所の提供するサービスについて
当事務所は、相続税に関する専門家であると同時に(あるいは、それ以上に)、相続問題に関する専門家であることを指向しています。このことは、単に相続税の申告手続きを効率よく行うといったことを意味するのではなく、相続発生という事実を重要な家族問題ととらえ、相続当事者(ただし、相続人のみを指すのではなく関連する当事者までを含むものと考えます)における納得性や衡平性に十分配慮しながら、最適な解を見いだすアドバイザーであるとの認識で取り組むことを意味しています。
とりわけ、相続財産の評価においては、税法特有の考えに基づく評価(例えば、特例措置による不動産評価額の軽減など)が採用されるため、相続人の受け止める評価や価値とかけ離れたものとなることも多くみられ、各当事者の相続税負担における不均衡が生じる場合もあります。また、相続後の各当事者における中長期のライフスタイルなども考慮した遺産分割協議が行なわれないと、相続人の最終的満足感は低いものとなってしまいます。
当事務所は、相続のあらゆる局面における当事者の諸事情に配慮しながら、最適な相続税申告が実現するよう心掛けております。
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